木曜日, 2月 28, 0020

伝染びょう

この事務所は狭い。

縦長の10畳にも満たない部屋に

テーブルと事務机2個が並べてある。

掃除のし甲斐がないない、雑然としたそこに

人の出入りはあまりない。


だからこそ、今の目の前の光景が、なんともシュールで

思わず笑ってしまいそうになり、必死で堪える。




事務所の大きさが表す様に、会社の規模も右にならえ

いや、むしろ逆か。


さっきまで、社長が電話でせわしなく誰かと話していたかと思うと

その2時間後に、スーツを着た、比較的高齢な人たちが8名ほど尋ねてきた。


軽く会釈をしてみたものの、一体何の団体様かわからずに

会社のぬるい空気を一変させられたことへの苛立ちを感じていた。


先ほどの落ち着きのなさとは一変して、借りてきた猫の如く椅子に座り

団体様と対峙する社長。


こんなに来客を想定していない事務所には椅子がなく、仕方ないので現場で使う

パイプ椅子を急遽、倉庫から引っ張り出してきた。


団体様はパイプ椅子を見るなり、不機嫌そうな顔でそれに座る。

一人が内ポケットからタバコを取り出すと、当たり前のように火を付ける。

すると他の人も内ポケットをまさぐり始める。

右の内ポケット・・・左の内ポケット・・・また右の内ポケット・・・どうやら無い人もいるようだ。


団体様の一人の比較的若い人が、社長に名詞を渡してから、軽く団体様の紹介を右から初めた。

どうやらその団体は、かなり大手の会社役員の方々らしいのだ

社長も恐縮しながら名詞を渡す。


そしてなにやら話を始めた。


狭い事務所に8人の来客、パイプ椅子に座る人たちは大手の役員連

その、すわり心地などといえぬほどの簡素な椅子は、先週現場で僕が座ってたものだ。

今までにこんな待遇は受けたことが無いだろうと、その表情から伺える。

それがタバコを促進する要素となり、あっという間に霞が掛かったように白く

なんとも不健康な淀んだ空気で狭い事務所を一杯にした。


さっきから、役員連に目を合わせずにパソコンのキーボードを叩いている僕も

不機嫌になってくる。

こうなるとお互いに良いことなど無いはずなのに、なぜまだ目の前に居るのか?

などと、まったく的外れな短絡的思考をしてしまうほど、不機嫌なのだ。


そんな不毛なことを考えていると、聞きなれない携帯電話の着信音が鳴った。

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